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経理DXで実現する業務革新!中間管理職のための実践ガイド
デジタル化が加速する今日、経理部門にも大きな変革が求められています。経理DXは、業務効率化による時間とコストの削減、データを活用した経営判断の迅速化、人材育成の課題など、経理部門が直面するさまざまな課題を解決します。本記事では、経理DXの本質と具体的な実践方法を解説し、中間管理職の皆様に有効な解決のヒントを提供します。
- DX化の重要性について知りたい方
- 経理DXについて知りたい方
- 経理DXの具体的な進め方について知りたい方
1.経理DXとは?デジタル時代の経理部門の在り方
デジタル技術の進化により、経理部門の変革が加速しています。経理DXは、その変革を実現する重要な経営戦略として注目を集めています。
1-1.経理DXの定義と範囲
経理DXとは、デジタル技術を活用して経理業務を変革し、経営に積極的に貢献する体制を構築することです。クラウド会計システムやAI-OCR(AIを活用した請求書自動読み取りシステム)、RPA(定型作業を自動化するツール)による業務自動化から、データ分析を活用した経営戦略の立案支援まで、経理業務全体の高度化を図ります。
1-2.なぜ今、経理DXが必要なのか
人材不足、働き方改革の推進、グローバル競争の激化など、企業を取り巻く環境は急速に変化しています。経理DXは、これらの課題に対する有効な解決策となり得ます。
具体的には、自動化による残業や休日出勤の削減、電子化による紙の保管スペースやコストの最適化、データ活用による経営判断のスピードアップ、月次決算業務の効率化などが実現できます。さらに、定型業務の自動化による人材不足への対応、リモートワーク環境の整備による働き方改革の実現、リアルタイムデータ分析による迅速な経営判断の支援など、経理部門が抱えるさまざまな課題の解決が可能です。
今後、日本企業における経理DXの取り組みは、さらなる広がりが期待されます。
日本国内におけるDXの取り組み状況については、以下の記事で詳しく解説しています。
「日本におけるDXの状況とは?事例や成功のポイントも解説」
1-3.2025年の崖と経理DXの関係性
経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」とは、老朽化したITシステムと人材不足により、企業のDX対応が遅れることで生じる経営リスクを指します。経理部門では、属人的な業務運営や紙ベースの作業が依然として多く残されており、早急な対応が必要です。経理DXへの早期着手は、このリスクを回避し、企業の持続的な成長を支える重要な施策となります。
社内DXの推進については、以下の記事で詳しく解説しています。
「社内DXとは?必要な理由や進め方、成功事例について解説」
2.経理DX導入のメリット:3つの変革
経理DXがもたらす変革は、主に3つの側面から構成されます。以下では、業務効率化、データ活用、人材育成それぞれの具体的なメリットを見ていきましょう。
2-1.業務効率化とコスト削減の実現
経理DXによる業務改革は、ペーパーレス化と自動化という2つの側面から、具体的な成果をもたらします。
ペーパーレス化がもたらす効果
経理書類の電子化により、書類の保管や管理にかかるコストを削減できます。クラウドストレージの活用で、必要な書類をすぐに探し出せるようになり、承認プロセスもスムーズになります。これにより、紙の購入費や印刷費などの直接的なコストも削減できます。
自動化による作業時間の削減
AI-OCRにより、請求書などの読み取りが自動化され、データ入力の手間が大幅に削減されます。また、RPAによる定型作業の自動化により、業務の生産性が向上し、経理担当者はより付加価値の高い業務に注力できるようになります。
2-2.データ活用による経営判断の迅速化
経理DXは、日々の会計データを、経営の意思決定に直結する資料へと変換可能です。
リアルタイムデータの活用
資金繰り状況や予算の執行状況をリアルタイムで把握できるようになり、経営判断のスピードの向上が期待できます。各部門の収支状況も即座に確認でき、問題の早期発見と対応が可能になります。
予測分析と戦略立案への貢献
AIを活用した売上予測や投資判断のシミュレーションにより、より精度の高い事業計画を立案できます。また、過去のデータ分析に基づく提案で、経営戦略の策定をサポートします。
2-3.人材育成と働き方改革の推進
経理DXは、最新のデジタル技術を活用することで、働き方の改革と人材育成の新たな可能性を広げます。
テレワーク対応と業務の柔軟性
クラウド会計システムの導入により、オフィス以外でも通常業務が可能になります。経理業務に必要な資料やデータにいつでもアクセスでき、承認作業もオンラインで完結します。これにより、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方が実現します。
若手人材の育成、技能・スキルの継承
オンライン研修システムの活用で、効率的な人材育成が可能になります。また、ベテラン社員の持つ知識やノウハウをデータベース化することで、確実な技能継承を実現します。業務手順の標準化とマニュアルのデジタル化により、誰もが同じ品質で業務を遂行できる環境が整います。
このように、経理DXは単なる業務効率化にとどまらず、経理部門の役割を大きく進化させる契機となります。
3.経理DXの具体的な進め方のステップ
経理DXを成功させるためには、段階的なアプローチが重要です。ここでは、実践的な4つのステップについて解説します。
3-1.Step 1: 現状分析と課題の明確化
経理DXの第一歩は、自社の経理業務の現状を正確に把握することから始まります。
現状の業務フローの可視化
経理部門の日常業務を詳細に洗い出し、作業時間や業務量、関連部署との連携状況などを整理します。これにより、各業務プロセスの実態が明確になり、非効率な部分や改善すべき点が見えてきます。
課題の抽出と整理
現状分析をもとに、優先的に取り組むべき課題を特定します。属人化している業務、手作業による負荷が高い作業、頻繁にミスが発生する工程など、具体的な課題を洗い出します。
3-2.Step 2: 重点領域の特定と目標設定
課題分析をもとに、DXによって最も効果が期待できる領域を見極め、具体的な目標を設定します。
優先順位の決定
経営への影響度、実現可能性、投資対効果などの観点から、取り組むべき領域の優先順位を決定します。特に、短期間で効果が出せる領域を特定し、初期の成功体験を創出することが重要です。
具体的な目標設定
「請求書処理時間の30%削減」「月次決算期間の短縮」など、測定可能な具体的目標を設定します。また、目標達成時期も明確にし、進捗管理の基準とします。
3-3.Step 3:適切なツール・システムの選択
目標達成に最適なツールやシステムを選択します。この際、さまざまな要素を考慮し、慎重に比較検討を行うことが重要です。
クラウド会計ソフトの活用
財務会計の基盤となるクラウド会計システムの選択は、経理DXの要となります。システムの機能性、操作性、他システムとの連携性などを総合的に評価し、自社に最適なものを選定します。
AI-OCRと請求書管理システムの導入
請求書処理の自動化に向けて、高精度なAI-OCRシステムと効率的な請求書管理システムの組み合わせを検討します。特に読取精度と運用負荷のバランスを重視した選定が必要です。
ツール・システム選択の基準
- 業務適合性
現在の業務フローとの整合性を確認し、必要に応じて業務プロセスの見直しも検討します。
- スケーラビリティ
事業の成長に対応できる拡張性を備えているかを評価します。
- ユーザビリティ
経理部門だけでなく、他部門の従業員にとっても使いやすいインターフェースであることを確認します。
- セキュリティ
データ保護と法令遵守に必要な機能を備えているかを精査します。
- コスト効果
導入・運用コストと期待される効果のバランスを検討します。
比較検討の方法
- ベンダー比較表の作成
主要機能、価格、サポート体制など、複数のベンダーを横断的に比較します。
- トライアル版の活用
実際の業務での使用感を確認し、課題点を洗い出します。
- ユーザーレビューの参照
同業他社の導入事例や評価を調査し、実践的な観点から検討を行います。
このように、システム選定においては、多角的な視点での比較検討が不可欠です。拙速な判断を避け、十分な検討期間を設けることで、最適なツール・システムの選択が可能となります。
DX推進に役立つツールについては、次の記事で詳しく解説しています。
DX推進に役立つツールを紹介!選定のポイントも解説
また、DXのクラウド化については次の記事で解説しています。
「DXにはクラウド化が必要?実施にあたり知っておきたい進め方とポイント」
3-4.Step 4: 段階的な導入と継続的な改善
システムの導入は、一度に全てを変更するのではなく、段階的に進めることが成功への鍵となります。
段階的な展開計画
まずは小規模な範囲でパイロット導入を行い、効果検証と課題抽出を行います。その結果をもとに必要な調整を加え、段階的に展開範囲を拡大していきます。
継続的な改善活動
定期的な効果測定と改善点の洗い出しを行い、PDCAサイクルを回していきます。利用者からのフィードバックを積極的に収集し、システムや運用方法の改善に活かします。
このように、経理DXの成功には、綿密な計画と段階的な実行が不可欠です。
社内でのDX推進計画については、以下の記事で詳しく解説しています。
DX推進計画とは?企業が着実な変革にいたるための進め方とポイントを解説
4.経理DX導入の課題と成功に導くポイント
経理DX導入では、さまざまな課題に直面します。しかし、それぞれの課題に対する適切な対策を講じることで、円滑な導入が可能です。ここでは主要な課題と、その解決に向けたポイントを解説します。
4-1.経営層の理解と部門横断的な協力体制の構築
経理DXの成功には、経営層の確かな理解と、全社を巻き込んだ推進体制の確立が不可欠です。
課題:経営層の理解不足と部門間の連携不足
経理DXは、システム導入に限らず、業務改革を伴う経営プロジェクトです。しかし、経営層の理解が不十分な場合や、関連部門との連携が不足すると、プロジェクトの推進力が弱まってしまいます。
成功のポイント:ビジョンの共有と全社的な推進体制の確立
経営層には、コスト削減額や業務効率化の具体的な数値目標を示し、投資価値への理解を促します。また、経理部門を中心に、情報システム部門や事業部門が参画する横断的なプロジェクトチームを組成します。定期的な進捗報告会では、具体的な成果を共有し、全社的な取り組みとしての推進力を維持します。
4-2.従業員の意識改革と教育プログラムの実施
新しいシステムや業務プロセスの導入に対する従業員の不安を解消し、積極的な活用を促すための取り組みが重要です。
課題:変化への抵抗と新システムへの不慣れ
長年の業務手順の変更は、抵抗感が生まれることがあります。特に、デジタルツールへの苦手意識がある従業員にとって、新システムの導入は大きな不安要素となります。
成功のポイント:段階的な教育と成功体験の共有
経理DX導入の目的と、業務改善後の具体的なメリットを分かりやすく説明します。そのうえで、従業員のITスキルレベルに応じた段階的な研修を実施します。また、一部の業務での成功事例を共有し、変革への前向きな姿勢を育てます。
4-3.法制度対応とセキュリティ強化の両立
デジタル化に伴う法令遵守と、情報セキュリティの確保は、経理DXの基盤となる重要課題です。
課題:複雑化する法規制とサイバーセキュリティリスク
電子帳簿保存法への対応や、デジタル化に関連する各種法令の遵守が必要です。また、クラウドシステムの活用では、情報漏洩やサイバー攻撃などのリスクへの対策が不可欠です。
成功のポイント:専門家との連携とセキュリティ対策の徹底
税理士や公認会計士と連携し、法令要件を満たすシステム設計を行います。また、ITの専門家の支援を受けながら、適切なセキュリティ対策を講じます。加えて、従業員向けのセキュリティ教育を定期的に実施し、運用面での安全性も確保します。
このように、経理DX導入における課題は、適切な計画と対策により克服可能です。重要なのは、課題を先送りせず、一つひとつ着実に対応していくことです。
5.経理DXがもたらす未来の経理部門像
経理DXの導入により、経理部門は従来の「数字の管理者」から「経営の戦略的パートナー」へと進化します。そして、定型業務の自動化により生まれた時間を、データ分析や経営戦略の立案支援に振り向けることで、より付加価値の高い業務に注力できるようになります。さらに、リアルタイムデータ分析や予測モデルを活用し、経営判断に必要な情報をタイムリーに提供できるようになります。このように、財務データを起点とした多角的な分析は、事業戦略の立案や投資判断の重要な基盤となります。
一方で、効果的なDX推進には、そのメリットを十分に理解し実践できる人材が必要となります。自社での人材育成が難しい場合は、外部の専門家からアドバイスを得ることも有効な選択肢の一つとなるでしょう。
経理DXは、経理部門の存在価値を高め、企業経営により大きく貢献するための重要な変革といえます。経理DXにお悩みの経営者様やご担当者様は、伴走型DXアドバイザーサービスをご提供するサン・エム・システムへご相談ください。豊富な経験と専門知識を基に、経理DXの各段階で直面する課題に対して最適な解決策を提案いたします。
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【この記事を書いた人】
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