人材アセスメントとは?活用メリットや実施の手順、成功のポイントを解説


人材アセスメントとは?活用メリットや実施の手順、成功のポイントを解説

人材アセスメントとは、人材の能力や適性を多角的に評価し、人材育成に役立てるための手法です。人材アセスメントは、組織の成長と発展に不可欠な要素である、適材適所の人材配置や効果的な人材育成に大きく貢献します。

本記事では、人材アセスメントの基礎知識から具体的な方法活用のステップ成功のポイントなどを網羅的に解説します。

  1. 人材アセスメントとは
    1. 人材アセスメントの定義
    2. 人材アセスメントと人事評価の違い
  2. 人材アセスメントが注目される理由
    1. 成果主義の浸透
    2. リモートワークの普及
  3. 企業が人材アセスメントを活用するメリット
    1. 企業側のメリット
    2. 従業員側のメリット
  4. 主な人材アセスメントの方法
    1. アセスメント研修
    2. 適性検査
    3. 多面評価(360度評価)
  5. 人的資本経営に取り組むメリット
    1. 目的・活用場面を明確にする
    2. 評価・測定すべき項目を決める
    3. アセスメント方法を選ぶ
    4. アセスメントを実施し、結果を分析する
    5. 結果を人材施策に活用する
  6. 人材アセスメントを成功させるポイント
    1. 目的を明確にする
    2. 評価基準を明確にする
    3. 受検者の合意を得る
  7. 人材アセスメントの活用事例
    1. SCSK株式会社
    2. アイリスオーヤマ株式会社
  8. 人材アセスメントを戦略的に活用し、組織を強化しよう

1.人材アセスメントとは

まずは、人材アセスメントとは何かについて詳しく解説します。

1.1. 人材アセスメントの定義

人材アセスメントとは、個人の能力や適性、パーソナリティなどを客観的かつ体系的に分析し、評価することです。具体的には、知的能力、業務遂行能力、リーダーシップ、コミュニケーション能力、ストレス耐性など、仕事に関連する様々な能力や特性が評価の対象となります。
人材アセスメントで得られた結果は、人材育成や人材配置、昇進・昇格や採用など、様々な人材マネジメント施策に活用できます。
なお、人材育成の概要や計画の立て方については、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

「人材育成とは?基本の意味や目的から主な育成方法、ポイントまで徹底解説」
「人材育成計画の立て方!必要なスキルや作成方法、成功のポイントを紹介」

1.2. 人材アセスメントと人事評価の違い

人材アセスメントと似た概念に、人事評価があります。両者は人材マネジメントに関わるツールという点で共通していますが、いくつかの違いがあります。

人材アセスメントは、第三者の専門家による客観的な評価が特徴です。心理学や行動科学の知見に基づいた評価基準や指標を用いて、公平かつ体系的に個人の能力や特性を測定します。
一方、人事評価は、上司が部下の職務遂行能力やパフォーマンスを評価するのが一般的です。上司の主観や経験に基づく評価となるため、評価者によってバラつきが生じる可能性があります。

また、人材アセスメントは、主に能力や適性、パーソナリティなどの潜在的な特性を評価するのに対し、人事評価は、実際の職務遂行や業績など、顕在化した能力やパフォーマンスを評価する傾向があります。
したがって、人材アセスメントの導入により、従業員は自身の能力や適性についてより納得感のある フィードバックを得られるようになるでしょう。

2.人材アセスメントが注目される理由

人材アセスメントが注目される背景には、以下のような社会情勢や労働環境の大きな変化があります。

2.1. 成果主義の浸透

まず、グローバル化に伴う企業間競争の激化により、高い生産性と競争力が求められるようになりました。これに伴い、年功序列ではなく個人の能力や実績に基づく成果主義が主流となっています。成果主義を適切に運用するには、社員一人ひとりの能力を客観的かつ公正に評価することが不可欠であり、人材アセスメントがその手段として注目されています。

2.2. リモートワークの普及

また、新型コロナウイルスや働き方改革の影響でリモートワークが普及したことで、社員の働きぶりを正しく把握し評価することが難しくなっています。このような状況下で、客観的な指標に基づく人材アセスメントが、公平な評価を行うための有効な手段として考えられています。
これらの変化により、個人の能力を客観的に評価し、最大限に活かすための人材アセスメントの重要性が増しているのです。

3.企業が人材アセスメントを活用するメリット

人材アセスメントの活用は、企業、従業員の双方にとって以下のようなメリットをもたらします。

3.1. 企業側のメリット

企業にとってのメリットとしては以下が挙げられます。

  • 適材適所の人材配置につながる

人材アセスメントの結果を基に、個人の強みを最大限に発揮できるポジションへの配置や、能力に応じた役割を与えることが可能になります。適材適所の人材配置は、組織全体の生産性向上や業績アップにもつながるでしょう。

  • 採用のミスマッチを防止できる

採用時に人材アセスメントを実施することで、応募者の能力や適性を客観的に評価し、自社の求める人材像との適合性を判断できます。これにより、応募者と企業双方のニーズのミスマッチを防ぎ、早期離職のリスクを軽減することが可能です。

  • 戦略的な人材育成に活用できる

人材アセスメントの結果を活用することで、社員一人ひとりの強みや弱みに合わせた育成プランを策定できます。限られた教育リソースを適切に配分しながら、効果的な人材育成を進められるでしょう。

3.2. 従業員側のメリット

従業員にとっては、以下がメリットと言えます。

  • 自身の強みや必要なスキルが明確になる

人材アセスメントを受けて自己理解を深めることで、従業員は自分の強みを活かせる分野や、伸ばすべきスキルを明確にできます。

  • 自分に合ったキャリアプランを立てられる

人材アセスメントで把握した自身の能力や適性を踏まえ、自身に合ったキャリアパスを描くことができます。これにより目指す目標が明確になり、主体的なスキルアップにもつながるでしょう。

  • 強みを活かした業務でパフォーマンスを発揮できる

人材アセスメントの結果をもとに適性に合った業務を担うことで、高いパフォーマンスを発揮し、大きな成果を上げることが可能です。これにより、社員のやりがいや、仕事に対する満足度の向上につながるはずです。

  • 納得感のある評価を得られる

人材アセスメントに基づいた評価は、従業員の能力や適性を客観的に判断したものです。そのため、従業員は評価の根拠や基準を理解しやすく納得感を持って受け止めることができます。評価への信頼感の高まりにより、エンゲージメントの向上も期待できます。

4.主な人材アセスメントの方法

主な人材アセスメントの方法としては、以下の3つが挙げられます。

4.1. アセスメント研修

実際の職務を模したグループディスカッションやロールプレイングなどを通して、参加者の資質や能力を評価する手法です。実務に近い環境で評価できるため、結果が実務での活躍に直結しやすいという特徴があります。

4.2. 適性検査

マークシート式や記述式の問題に答えてもらうことで、適性や性格などを評価する手法です。採用プロセスに取り入れるケースが多く、面接前に候補者の特性を把握するのに役立ちます。

4.3. 多面評価(360度評価)

上司だけでなく、同僚や部下など、対象者を取り巻く多様な評価者から評価を得る手法です。これにより、評価者の主観に偏ることなく、対象者の能力や行動を多角的に捉えることができます。

5.人材アセスメントを活用する手順

人材アセスメントを活用する手順は以下のとおりです。

5.1. 目的・活用場面を明確にする

人材アセスメントは、採用、配置、育成、昇進・昇格など、様々な場面で活用できるツールです。自社の課題や目指す方向性を踏まえ、どの場面でアセスメントを活用するのか、具体的なイメージを持つことが重要です。

5.2. 評価・測定すべき項目を決める

目的に沿って、従業員のどのような能力や特性を評価・測定すべきかを検討します。先に定めた目的や活用場面と整合性のある項目を設定することが大切です。

5.3. アセスメント方法を選ぶ

評価項目に適した評価手法やアセスメント方法を選定します。ツール選定の際は、ツールの信頼性や妥当性、費用対効果などを総合的に判断することが賢明です。

5.4. アセスメントを実施し、結果を分析する

選定した手法・ツールを用いて、実際に人材アセスメントを実施します。アセスメント実施後は、評価項目ごとの傾向や課題を明らかにし、個人の能力特性を多角的に把握します。また、組織全体の傾向を分析することで、人材戦略の方向性を見出すこともできるでしょう。

5.5. 結果を人材施策に活用する

アセスメント結果を元に、採用、配置、育成、昇進・昇格など様々な人材施策に活用します。アセスメント結果を有効に活用することで、個人と組織の能力開発が促進され、生産性の向上につながります。

6.人材アセスメントを成功させるポイント

人材アセスメントを導入し効果的に活用するためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。

6.1. 目的を明確にする

人材アセスメントを漠然と実施しても、得られる効果は限定的です。アセスメントで何を明らかにし、その結果をどのように活用するのか、具体的な目的を設定することが不可欠です。
なお、目的を定める際は、自社の経営戦略や人材戦略と整合性を取ることが大切です。会社が目指す方向性や、求める人材像を踏まえ、アセスメントの目的を設定しましょう。

6.2. 評価基準を明確にする

曖昧な評価基準では、評価者によって判断がブレてしまい、公平性や客観性が損なわれるおそれがあります。評価項目や尺度、判定基準などを詳細に設定し、評価者間で認識を揃えておく必要があります。

6.3. 受検者の合意を得る

人材アセスメントを実施する前に、被評価者に対して、評価の目的や方法、活用方法などを丁寧に説明することが大切です。また、アセスメント実施後は、協力してくれた受検者に対し、評価結果の丁寧なフィードバックを行いましょう。

7.人材アセスメントの活用事例

ここでは、国内企業における人材アセスメントの活用事例を紹介します。

7.1. SCSK株式会社

ITを中心に事業を展開するSCSK株式会社では、選考過程において2回の適性検査を実施し、入社後の活躍を判断できる項目を中心に多面的に評価しています。
同社では、適性検査の結果と入社後のパフォーマンスの相関関係を分析し、言語数理能力がシステムエンジニアとしての成果に影響していることを明らかにしました。こうした知的能力は入社後の資格取得やアカデミックな学習においても重要な役割を果たすと考えられるそうです。
このように、適性検査を採用だけでなく入社後の育成にも活かすことで、同社は自社に最適な人材の確保と育成を実現しています。

7.2. アイリスオーヤマ株式会社

アイリスオーヤマ株式会社は、2003年から360度評価を導入し、契約社員やパート職員を含む全従業員の昇進・昇格・昇給・降格の判断に用いています。
同社では、会長や役員も例外なく評価の対象です。評価項目は幹部従業員と一般従業員で異なり、6段階で評価を実施。評価者の選出は公平性に配慮され、フィードバック時には詳細な帳票が用いられます。
360度評価の結果をもとに、下位10~15%の従業員に対して"イエローカード"が出される可能性がありますが、これは気づきを与え、改善を促すための取り組みと位置づけられています。
360度評価を効果的に運用することで、組織力の強化と人材育成を両立している取り組みです。

8.人材アセスメントを戦略的に活用し、組織を強化しよう

人材アセスメントは、個人の能力や適性を多角的に評価し、適材適所の人材配置や能力に見合った人材育成に活かすための有効な手法です。自社の経営戦略に合った人材アセスメントを導入し、PDCAサイクルを回しながら、組織力強化につなげていきましょう。

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また、単にスキルを可視化するだけでなく、一人ひとりに適したキャリアプランを表示できるため、具体的なキャリアイメージを描きながら主体的な成長を促せる点も大きな特長です。

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