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IT投資最適化ガイド:情報システム部門が実現する戦略的リソース活用

企業の競争力強化に向けて戦略的なIT投資の重要性が高まるなか、その立案・実行を担う情報システム部門の役割が注目されています。
日々の運用管理に追われ、戦略的な投資判断の時間が確保できない、経営層への提案が通らず必要な投資が実現できないなど、多くの情報システム部門が課題を抱えています。
本記事では、経営目標の達成に貢献するIT投資を実現するために、情報システム部門が取り組むべき具体的な方法論とリソース最適化のアプローチについてご紹介します。
- 運用管理に追われながらのIT投資の立案・実行に課題を感じている方
- DX推進やIT戦略の立案を担当し、情報システム部門との効果的な連携方法を模索している方
- IT投資の優先順位付けや投資効果の見極めに不安を感じている方
1.IT投資における情報システム部門の現状と課題
2024年のIT投資動向調査によると、国内の半数近くの企業がIT投資予算の増額を計画している一方で、その効果的な実行に課題を抱えています。
特に情報システム部門では、日々の運用管理業務の負荷増大により、投資判断や実行計画の策定に十分なリソースを確保できていない実態があります。
ここでは、多くの企業の情報システム部門が直面している具体的な課題を明らかにします。
情報システム部門の課題については、以下の記事もあわせてご覧ください。
「情シス(情報システム部門)の課題とは?現状と役立つ解決策を紹介」
1-1.運用管理業務の負荷増大
クラウドサービスの普及やセキュリティ要件の高度化により、情報システム部門が担う日常的な運用管理業務は年々増加傾向にあります。
特に注視すべき課題として、以下の実態が挙げられます。
第一に、ユーザーサポートやシステム保守といったノンコア業務における負荷増大です。
リモートワークの定着により、従来以上にきめ細かなユーザーサポートが求められ、運用管理の工数が増加しています。
第二に、セキュリティインシデント対応の複雑化です。サイバー攻撃の手法が高度化し、対応に必要な専門知識や工数が増加しています。
インシデント発生時の初動対応から再発防止策の実施まで、セキュリティ対策に割くリソースは年々増加傾向にあります。
ノンコア業務については、以下の記事もあわせてご覧ください。
「業務改善の鍵を握るノンコア業務とは?効率化のメリットや方法を徹底解説」
1-2.戦略的投資判断を阻む障壁
運用管理業務への注力により、新規技術の評価や投資計画の策定といった戦略的な業務に時間を確保できない状況が続いています。
具体的には、次のような機会損失が発生しています。
最も深刻なのは、新技術導入の遅れによる競争力低下です。
例えば、業務効率化に有効なRPAやローコード開発ツールの評価・検証に十分な時間を確保できず、導入判断が遅れるケースが散見されます。
また、既存システムの改善機会の逸失も課題です。
日常的な運用で把握した改善ポイントを投資計画に反映する余裕がなく、システムの老朽化や非効率な運用が継続する事例が増えています。
1-3.経営層とのコミュニケーションギャップ
IT投資の必要性や効果を経営層に適切に説明できず、予算確保が困難になるケースが増えています。
主な要因として、次の二点が挙げられます。
一つ目は、投資効果の定量化の難しさです。
特にDX関連投資では、直接的な収益改善効果を示すことが難しく、経営層の理解を得られない事例が多く見られます。
二つ目は、経営課題との結びつけの不足です。技術的な観点からの説明に終始し、投資がもたらす経営インパクトを具体的に示せていないケースが目立ちます。
DX関連の予算編成については、以下の記事もあわせてご覧ください。
「DXにかかる予算はどのくらい?コストの目安と予算確保の取り組み方を解説」
1-4.リソース配分の最適化困難
運用管理業務と戦略的施策の両立が求められる中、限られた人的リソースの最適な配分が課題となっています。
特に専門性の高い人材の確保や育成に十分な投資ができない状況が続いています。
2.効果的なIT投資を実現する3つの重点施策
IT投資の効果を最大化するためには、戦略的な視点に基づく施策の実行が不可欠です。
ここでは、限られたリソースの中で成果を上げるための3つの重点施策について解説します。
2-1.運用管理業務の効率化とリソース創出
戦略的な投資判断に必要なリソースを確保するには、まず運用管理業務の効率化が不可欠です。
効果的なアプローチとして、以下の取り組みが推奨されます。
まず、ヘルプデスク業務の標準化と効率的な運用体制の構築が重要です。
よくある問い合わせ事項をマニュアル化し、一次対応を外部委託することで内部リソースを戦略的な業務に振り向けることが可能になります。
特に、経験豊富な外部パートナーのヘルプデスクサービスを活用することで、安定した品質と効率的な運用を実現できます。
運用管理業務の自動化も重要な施策です。
システム監視やバックアップ、パッチ適用といった定型業務について、自動化ツールの導入を進めることで、運用負荷を大幅に軽減できます。
ヘルプデスクの効率化については、以下の記事もあわせてご覧ください。
「ヘルプデスクの効率化・業務改善ガイド!企業の情報システム部門における具体的な方法を解説」
2-2.データドリブンな投資判断プロセスの確立
投資判断の説得力を高めるには、客観的なデータに基づく評価プロセスの確立が重要です。
具体的には、システム運用データや業務効率指標などの定量的な評価基準を設定し、投資効果を可視化する仕組みづくりが求められます。
2-3.経営目標と連動した投資戦略の策定
企業の中期経営計画や事業戦略と整合性の取れたIT投資計画の立案が重要です。
以下の3つのステップで進めることで、効果的な投資戦略を策定できます。
- 経営計画における重点領域の特定
中期経営計画からデジタル化が必要な領域を特定し、各事業部門の目標との整合性を確認します。 - 具体的な投資効果の設定
売上向上、コスト削減、経営基盤強化の観点から投資によって実現する具体的な効果を設定します。 - 効果測定の仕組み構築
設定した投資効果をKPIで測定し、定期的に検証と改善を行います。
これらの取り組みにより、経営目標の達成に直接貢献するIT投資を実現することが可能になります。
3.IT投資における重点領域の設定
効果的なIT投資を実現するためには、自社の経営戦略に基づいた投資領域の優先順位付けが重要です。
ここでは、多くの企業で重視されている4つの重点領域と、その選定理由について詳しく解説します。
3-1.DX(デジタルトランスフォーメーション)推進基盤の整備
デジタル技術を活用した業務変革を実現するためには、基盤となるシステムやツールへの計画的な投資が不可欠です。
データ分析基盤の整備やクラウドサービスの戦略的活用が特に重要です。
クラウド環境への移行を進める際は、既存システムとの連携やセキュリティ確保について十分な検討が必要です。
DXツールの選定では、自社の業務プロセスとの適合性を重視し、段階的な導入を推奨します。
DX推進のツールについては、以下の記事もあわせてご覧ください。
「DX推進に役立つツールを紹介!選定のポイントも解説」
「DXにはクラウド化が必要?実施にあたり知っておきたい進め方とポイント」
3-2.セキュリティ対策強化
サイバー攻撃の高度化や法規制の厳格化に対応するため、セキュリティ対策の継続的な強化が不可欠です。
セキュリティ投資においては、次の観点からの検討が重要です。
まず、多層的な防御体制の構築が基本となります。境界防御だけでなく、内部対策やエンドポイント保護など、複数の防御層を組み合わせた総合的な対策が求められています。
特にリモートワーク環境のセキュリティ確保は、優先度の高い課題として認識されています。
インシデント対応体制の整備も重要です。
セキュリティ事故発生時の初動対応から分析・復旧、再発防止までの一連のプロセスを確立し、必要なツールや人材を確保する必要があります。
3-3.業務効率化・自動化
定型業務の自動化やワークフローの最適化により、業務効率の大幅な向上を実現します。
自動化ツールの選定では、現場の業務フローを十分に理解した上で判断することが重要です。
RPAやローコード開発ツールなど、効果的な技術の選定には、実際の業務プロセスとの親和性を慎重に評価する必要があります。
ローコード開発については、以下の記事もあわせてご覧ください。
「ローコード開発とは? 注目される背景とDX推進への有効性について解説」
3-4.ユーザー体験向上
システムの使いやすさや業務効率に直結するユーザーインターフェースの改善も重要な投資領域です。
特に以下の点に注目が集まっています。
モバイル対応の強化は、多くの企業で優先度の高い課題となっています。
場所を問わない業務遂行を可能にするため、主要なシステムのモバイル対応が進められています。
クラウドサービスとの連携による利便性向上も重要なテーマです。
社内システムとクラウドサービスのシームレスな連携により、業務効率の向上を図る取り組みが増えています。
4.投資対効果を最大化するための実践手法
IT投資の成否を分けるのは、その実行プロセスにあります。
投資効果を確実に引き出すための評価指標の設定から、段階的な導入アプローチ、継続的なモニタリングまで、実践的な手法をご紹介します。
4-1.投資評価指標の設定と測定
投資効果を定量的に評価するための指標設定が重要です。
具体的には、以下のような指標の活用が推奨されます。
コスト削減効果については、TCO(Total Cost of Ownership)の観点からの評価が基本となります。
初期投資だけでなく、運用コストや保守費用も含めた総合的な評価が必要です。
業務効率化の効果測定では、処理時間の短縮率や工数削減効果など、具体的な指標を設定します。
可能な限り金額換算された効果を示すことで、投資判断の材料として活用しやすくなります。
4-2.段階的な導入アプローチ
投資リスクを最小限に抑えながら確実に効果を得るため、段階的な導入計画の策定が必要です。
まず、小規模な実証実験(PoC)から開始し、投資効果の検証を行います。
この段階で得られた知見を基に、本格導入時の課題や必要な対策を明確にできます。
検証結果を踏まえ、展開範囲を段階的に拡大していきます。
各段階での効果測定と課題対応を確実に行うことで、投資効果の最大化を図ることができます。
4-3.リスク管理と継続的なモニタリング
投資効果の測定と課題の早期発見のため、定期的なモニタリング体制の構築が重要です。
特に、セキュリティリスクや運用コストの変動など、重要指標の継続的な監視が求められています。
5.リソース最適化の具体策
戦略的なIT投資を実現するには、限られたリソースを最適に配分することが重要です。
ここでは、外部サービスの活用や専門性の確保など、具体的なリソース最適化の方法をご紹介します。
5-1.外部サービス活用によるコスト効率向上
運用管理業務の一部を外部委託することで、コスト効率を高めながら社内リソースを戦略的な施策に振り向けることが可能です。
特にヘルプデスク業務など、標準化された業務の外部活用が効果的です。
サービスレベルの設定と品質管理を適切に行うことで、安定した運用品質を確保できます。
外部リソースの活用については、以下の記事もあわせてご覧ください。
「中小企業のための情シス代行アウトソーシングサービス完全ガイド ~導入から活用のポイントまで~」
5-2.専門性の確保と技術力強化
高度化するIT環境に対応するため、専門性の高い人材の確保と育成が不可欠です。
外部パートナーとの連携も含め、必要な技術力を効率的に確保する体制づくりが求められています。
DX推進やセキュリティ対策など、専門性の高い領域では、計画的な人材育成と外部リソースの活用を組み合わせた戦略が有効です。
人材育成については、以下の記事もあわせてご覧ください。
「人材育成とは?基本の意味や目的から主な育成方法、ポイントまで徹底解説」
「人材育成計画の立て方!必要なスキルや作成方法、成功のポイントを紹介」
「IT人材とは?必要なスキルや採用・育成方法をわかりやすく解説」
5-3.柔軟なリソース配分の実現
事業環境の変化や突発的な課題に迅速に対応するため、柔軟なリソース配分の仕組みが重要です。
内部リソースと外部リソースを適切に組み合わせ、最適な運用体制を構築します。
プロジェクト規模に応じて外部リソースを機動的に活用しながら、チームメンバーのスキルを可視化し、案件の優先度に基づいて適切な人材をアサインする体制を整えることが効果的です。
6.経営層への提案・説明のポイント
IT投資の実現には、経営層の理解と承認を得ることが不可欠です。
ここでは、投資効果の定量化やビジネス価値との紐付けなど、経営層への効果的な提案・説明手法について解説します。
6-1.投資効果の定量化手法
投資効果を経営指標と紐付けて定量的に示すことで、経営層の理解を得やすくなります。
コスト削減効果だけでなく、売上増加や顧客満足度向上など、ビジネス価値との関連を明確に示すことが重要です。
可能な限り、具体的な数値目標を設定し、その達成度を測定する仕組みを整えます。
6-2.ビジネス価値との紐付け
IT投資がもたらす具体的なビジネス価値を明確に示すことで、投資の必要性への理解を深めることができます。
業務効率化による生産性向上や新規ビジネス機会の創出など、具体的な効果を示すことが重要です。
6-3.中長期的な成長戦略との整合性
投資計画を企業の中長期的な成長戦略と結びつけることで、経営層の支持を得やすくなります。
デジタル化による競争力強化や新規事業展開への貢献など、戦略的な価値を明確に示す必要があります。
投資の必要性を市場動向や競合他社の動きなども踏まえて説明することで、説得力が増します。
7.まとめ:効率的なヘルプデスク運営のために
情報システム部門が本来持つべき戦略的な役割を果たすためには、運用管理業務の効率化と適切なリソース配分が不可欠です。
本記事でご紹介した方法論を参考に、貴社の状況に合わせた最適な投資戦略を検討してください。
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【この記事を書いた人】
サン・エム・システムコラム編集部でございます。
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