⌚ 2024/11/20 (Wed) 🔄 2024/12/ 3 (Tue)
建設DXで業界改革!導入のメリットと推進のポイントを解説
建設DX(デジタルトランスフォーメーション)が業界の未来を左右する重要なキーワードとなっています。人手不足や生産性向上の課題に直面する建設業界において、デジタル技術を活用した業務プロセスの変革は不可欠です。本記事では、建設DXの概要から、BIM/CIMやAI、ドローンなどの最新技術の概要 、さらには導入時の課題解決まで、業界に関わるすべての方々に役立つ実践的な情報を解説します。
- 建設DXについて知りたい方
- 人手不足や生産性向上に課題を感じている方
- DX化のメリットについて知りたい方
1.建設DXが求められている背景
建設業界は多くの課題に直面しており、デジタル技術を活用した変革が急務となっています。建設DXが求められる主な背景を見ていきましょう。
1-1.人材不足と高齢化問題
建設業界の人材不足は年々深刻化しています。国土交通省の調査によると、建設業就業者の55歳以上が約34%を占める一方、29歳以下は約11%に過ぎず、若手入職者の減少と熟練技能者の高齢化が加速しています。2025年には約90万人の働き手が不足すると予測されており、この状況を打開するためには、DXによる作業の省力化と、デジタル技術を活用した魅力的な職場環境の創出が求められています。
1-2.低い生産性
建設業の労働生産性は、他産業と比較して課題となっています。厚生労働省の「毎月勤労統計調査」(令和6年8月結果確報)によれば、建設業の1カ月平均総実労働時間は151.4時間で、全産業の中で運輸業・郵送業、鉱業・採石業等に次いで3番目に長い労働時間となっています。DXを活用した業務プロセスの効率化や建設作業の自動化により、この生産性向上が期待されています。
1-3.技術継承の困難さ
熟練技能者の持つ高度な技術やノウハウの継承も大きな課題です。現状では、職人の勘や経験に頼る部分が多く、体系的な技術伝承が困難な状況にあります。DXを活用することで、これらの暗黙知をデータ化・可視化し、次世代への効果的な技術継承を実現することができます。
1-4.働き方改革への対応
建設業界では、長時間労働や休日の少なさが長年の課題となっています。2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が完全適用され、原則として月45時間・年360時間以内、特別な事情がある場合でも年720時間以内、複数月平均80時間以内(休日労働含む)、月100時間未満(休日労働含む)という制限が設けられています。この規制に確実に対応していくため、DXによる業務効率化や遠隔作業の導入により、より働きやすい環境を整備することが急務です。
2.建設DX導入のメリット
建設DXの導入は、業界が直面するさまざまな課題を解決し、企業の競争力を高める可能性を持っています。具体的なメリットについて解説します。
2-1.業務効率化によるコスト削減
DXによる業務プロセスの自動化や最適化は、人的ミスの削減と作業時間の短縮に貢献します。例えば、AI搭載の積算システムを導入することで、見積もり作成時間を短縮できます。また、紙での作業や手作業による二重入力を削減することで、直接的なコスト削減だけでなく、業務効率の向上も実現できるでしょう。
2-2.生産性の向上
ICT建機やBIM/CIMなどのデジタル技術の活用により、建設現場の生産性向上が期待できます。3D測量技術や自動制御の建設機械の導入により、作業効率が向上し、従来より少ない人員での作業が可能です。これらの技術導入は、工期の短縮や品質の安定化にも寄与するといえます。
2-3.データ活用による意思決定の迅速化
IoTセンサーやデジタルツールを活用することで、現場の状況をリアルタイムで把握し、データに基づいた意思決定が可能になります。例えば、作業の進捗状況や資材の配置状況を正確に把握することで、より効率的な工程管理や問題の早期発見・対応が実現できます。
2-4.若手人材の確保と育成
デジタル技術の活用により、建設業のイメージを刷新し、若手人材にとって魅力的な業界となることが期待できます。VR/AR技術を活用した研修システムの導入により、安全で効果的な技術習得が可能になります。また、デジタルツールを活用した業務環境の整備は、若手人材の早期戦力化と定着率の向上につながるでしょう。
人材の育成については以下の記事で詳しく解説しています。
「人材育成とは?基本の意味や目的から主な育成方法、ポイントまで徹底解説」
3.建設DXで活用される最新技術
建設DXを推進する上で、さまざまな最新技術が活用され始めています。ここでは、建設業界に変革をもたらす主要な技術について解説します。
3-1.BIM/CIM
建築・土木工事のデジタル化の中心となるのが、BIM(Building Information Modeling)とCIM(Construction Information Modeling)です。これらは建築物の3次元デジタルモデルを作成し、設計から維持管理まで一貫して活用する手法です。例えば、施工前に部材の干渉チェックを行うことで手戻りを防いだり、完成後の姿を事前にシミュレーションしたりすることができます。
3-2.AI(人工知能)
人工知能技術は、建設業のさまざまな場面での活用が進んでいます。現場の安全管理では画像認識AIが危険行動を検知し、品質管理では機械学習が最適な工法を提案します。これまで熟練作業員の経験と勘に頼ってきた判断を、データに基づいて、より正確に行えるようになるのです。
3-3.ドローンと3Dスキャニング
高所や広範囲の測量作業を、より安全かつ効率的に行えるのがドローンと3Dスキャニング技術です。従来は作業員が直接行っていた測量や点検作業を、空からの撮影データで代替できます。また、工事の進捗状況を正確に記録し、完成後の建造物の維持管理にも活用できます。
3-4.IoTとセンサー技術
IoT(Internet of Things)技術は、建設現場の「見える化」を実現可能です。作業員の位置情報や体調、建設機械の稼働状況、資材の配置など、さまざまな情報をリアルタイムでデジタル管理できます。これにより、現場の安全性が高まり、作業の効率化や設備の予防保全も可能になります。
3-5.クラウドベースの統合管理システム
建設プロジェクトに関わる全てのデータをクラウド上で一元管理することで、情報共有が格段に効率化します。設計図面や工程表、コスト情報などを関係者全員がリアルタイムで確認・更新できるため、コミュニケーションの円滑化と意思決定の迅速化につながります。
DXのクラウド化については、次の記事で詳しく解説しています。
「DXにはクラウド化が必要?実施にあたり知っておきたい進め方とポイント」
4.建設DX導入の課題
建設DXの導入は多くのメリットをもたらす一方で、いくつかの重要な課題があります。これらの課題を適切に理解し、対策を講じることが導入成功のポイントとなります。
4-1.初期投資コストの問題
DX導入には相応の初期投資が必要となり、特に中小企業にとって大きな課題となっています。具体的には、デジタル機器やソフトウェアの購入費用、システム構築費用、従業員教育にかかる費用などが発生します。そのため、投資対効果を慎重に検討し、企業の規模や状況に合わせて段階的に導入を進めることが重要です。
4-2.従業員のデジタルスキル不足
建設業界では、従来の業務手法に慣れた従業員が多く、デジタル技術への対応が課題となっています。新しいシステムやツールの導入により、業務プロセスが変更されることへの不安や抵抗感も見られるかもしれません。この課題に対しては、年齢層や習熟度に応じた教育プログラムの実施と、社内のデジタル人材の育成が必要となります。
4-3.既存システムとの統合
新しいデジタルシステムを導入する際、既存のシステムやデータとの互換性の確保が課題となります。長年使用してきたシステムとの整合性を保ちながら、新技術を段階的に導入していく必要があるでしょう。特に、異なるシステム間でのデータ連携や、過去のデータの移行には慎重な計画と対応が求められます。
4-4.セキュリティリスク
デジタル化の進展に伴い、情報セキュリティの確保が重要な課題となっています。クラウドサービスやIoTデバイスの導入により、情報漏えいやシステム障害などのリスクが増加する可能性があります。これらのリスクに対しては、適切なセキュリティ対策の実施と、従業員のセキュリティ意識の向上が必要です。
DX推進におけるセキュリティリスクの課題については、こちらの記事で詳しく解説しています。
「DX推進におけるセキュリティリスクとは?課題と対策のポイントを解説」
5.建設DXを進めるポイントと注意点
建設DXを効果的に推進するためには、組織全体での計画的な取り組みが求められます。ここでは、成功に向けた重要なポイントについて解説します。
5-1.経営層のコミットメントと明確なビジョン設定
建設DXの推進には、経営層の強いリーダーシップが欠かせません。経営層がデジタル技術への理解を深め、組織としての明確なビジョンと具体的な目標を示すことで、DX推進の方向性を全社で共有することができます。また経営層自らが、なぜDXが必要なのかを全社員に分かりやすく伝え、組織全体の意識改革を促すことが求められます。
5-2.段階的な導入と小さな成功の積み重ね
建設DXの導入は、一度に大規模な変革を目指すのではなく、段階的なアプローチが効果的です。まずは比較的取り組みやすい一つの部署や特定の業務プロセスから開始し、その成果を可視化することで、組織全体の理解と支持を得やすくなります。成功事例を積み重ねることで、従業員のモチベーション向上にもつながるでしょう。
5-3.従業員教育とチェンジマネジメント
DX推進の成功は、従業員の理解と協力に大きく依存します。年齢や役職に応じた段階的な教育プログラムの実施により、デジタルスキルの向上を図ることが重要です。また、社内でDXを推進できる中核人材の育成も重要です。従業員が抱く不安や疑問に対しては、丁寧な対話を通じて理解を深め、全員が前向きに参加できる環境を整えましょう。
DX人材については、次の記事で詳しく解説しています。
「DX人材とは?求められる役割や必要とされる理由、人材確保の方法」
5-4.外部専門家との連携
建設DXを効果的に進めるためには、最新のデジタル技術や業界動向に関する専門的な知見が必要です。自社のリソースだけでは対応が難しい場合、外部の専門家やコンサルタントとの連携を検討することが有効です。また、異業種企業やスタートアップとの協業を通じて、新しい視点や革新的な技術を取り入れることで、DX推進を加速させることができます。
社内のDX推進については、こちらの記事で詳しく解説しています。
「DX推進計画とは?企業が着実な変革にいたるための進め方とポイントを解説」
6.建設DXの未来展望と推進への道筋
建設DXは、建設業界が直面する人材不足、低生産性、技術継承の困難さ、働き方改革への対応といった課題を解決する鍵となります。BIM/CIM、AI、ドローン、IoT、クラウドシステムなどの最新技術を活用することで、業務効率化、生産性向上、データ駆動型の意思決定、若手人材の確保など、多くのメリットがもたらされます。
しかし、初期投資コスト、従業員のスキル不足、既存システムとの統合、セキュリティリスクなどの課題も存在します。これらを克服するために求められるのは、経営層のコミットメント、段階的な導入、従業員教育、外部専門家との連携です。
建設DXの成功は、業界全体の競争力強化と持続可能な成長につながります。各企業が自社の状況に合わせて戦略的にDXを推進し、デジタル時代に適応した新たな建設業の姿を築いていくことが求められています。
建設DXの導入を検討されている企業様には、専門家のサポートが有効です。サン・エム・システム株式会社の「DXアドバイザーサービス」では、IT助言・提言、業務の現状把握、DX戦略策定支援などを通じて、効果的かつ効率的な建設DXの推進をサポートしています。DXについて相談できる専門家をお探しの方は、お気軽にお問い合わせください。
【この記事を書いた人】
サン・エム・システムコラム編集部でございます。