⌚ 2024/11/12 (Tue) 🔄 2024/12/ 3 (Tue)
DXにつながるリスキリングとは?実施のメリットや手順、企業の成功事例を紹介
デジタル技術の急速な進歩により、ビジネス環境は大きく変化しています。この変化に適応し、競争力を維持するためには、従業員のスキルアップが不可欠です。本記事では、DX時代に求められるリスキリングの重要性や具体的な実践方法、成功のポイントなどを解説します。リスキリングを効果的に進め、企業の成長につなげたい方はぜひ最後までご覧ください。
- 社内の人材育成を担当している方
- リスキリングにより得られるメリットについて知りたい方
- リスキリングの具体的な事例について知りたい方
1.リスキリングとは
まずは、リスキリングの定義と関連する用語との違いを解説します。
1-1.リスキリングの定義
リスキリングとは、新たな業種・職種や変化する職務内容に適応するために、従業員が新しい技術やスキルを習得する、もしくは企業が習得させることを指します。DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展に伴い、個々の従業員に多様なスキルが求められるなか、リスキリングは企業と個人の成長に不可欠な要素となっています。
DXの概念やDX人材に必要なスキルについては、以下の記事で詳しく解説しています。
DX人材とは?求められる役割や必要とされる理由、人材確保の方法
1-2.リスキリングと類似用語の違い
リカレント教育
「リカレント(recurrent)」は循環する、繰り返すといった意味を持ち、社会に出た後も必要に応じて教育を受け、仕事と学びを繰り返すことを指します。リカレント教育は主に大学や大学院などの教育機関での学び直しを指す一方、リスキリングは主に企業で行われ、現在の仕事や将来のキャリアに直結するスキル習得に焦点を当てています。
アップスキリング
アップスキリングは既存のスキルを向上させることを指しますが、リスキリングは新しい分野のスキルを習得することを意味します。リスキリングの方がより変革的な意味を持ちます。
アンラーニング
アンラーニングは、既存の知識や習慣を意図的に「学び捨てる」プロセスを指します。リスキリングが新しいスキルの獲得に焦点を当てているのに対し、アンラーニングは現状に合わない古い考え方や方法を手放すことに重点を置いています。
2.DX時代にリスキリングが注目される理由
なぜDX時代にリスキリングが注目されているのでしょうか。ここでは、その背景と重要性について詳しく解説します。
2-1.デジタル技術の発展
AI、IoT、ビッグデータなどのデジタル技術が急速な発展に伴い、これらの技術を理解し活用できる人材が求められています。リスキリングは、この技術革新に追いつくための重要な手段として注目されています。
2-2.デジタル人材の不足
経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」では、デジタル人材不足の深刻さを示す「2025年の崖」という言葉が注目を集めました。この「崖」とは、日本企業のDXの遅延により、2025年から2030年の間に最大年間12兆円の経済損失が発生する可能性のことを指します。
参考:経済産業省|DXレポート 2.2(概要)
このような状況下で、デジタル人材の確保は企業の喫緊の課題となっており、効果的なデジタル人材を育成する方法のひとつとして、リスキリングが注目されています。
2-3.政府の後押し
政府の後押しにより、教育プラットフォームの開設や助成金の給付など、以下のような支援事業が展開されています。これらの支援策を通じて、政府は労働者のスキルアップを図り、デジタル人材の育成や産業構造の変化への対応を促進しようとしているのです。
支援策の詳細は、以下のリンクよりご確認ください。
経済産業省|リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業
経済産業省|第四次産業革命スキル習得講座認定制度
経済産業省|デジタル人材育成プラットフォーム「マナビDX」を開設しました!
厚生労働省|人材開発支援助成金
厚生労働省|教育訓練給付制度
3.リスキリングにより企業が得られるメリット
リスキリングは、DX推進につながる多くのメリットを企業にもたらします。主なメリットとしては、以下の3つが挙げられます。
3-1.競争力・適応力の強化
リスキリングにより、従業員がより高度な技術を活用できるようになることで、企業の生産性が向上し、競争力の強化につながります。同時に、組織全体がデジタル技術への理解を深めることで、市場の変化や新たな技術トレンドへの適応力も向上するでしょう。
3-2.従業員エンゲージメントの向上
リスキリングにより、企業は従業員に新しい成長機会を提供し、自己実現の場を与えることができます。新しいスキルを習得することで、従業員は自身の成長を実感し、仕事への意欲や組織への帰属意識が高まるでしょう。これにより、従業員のエンゲージメントが向上し、生産性の向上や離職率の低下にもつながります。
3-3.DX人材の確保
リスキリングは単なるスキル習得だけでなく、効果的なDX人材を確保する手段としても機能します。リスキリングを通じて既存の従業員をDX人材として育成すれば、外部からの高コストな人材採用に頼ることなく、企業文化や業務知識を理解したDX人材を確保できるでしょう。
DX人材の育成方法については、以下の記事で解説しています。
DX研修とは?未来に向けた企業成長の軸となる人材を育成するために
4.リスキリングを実施する手順
リスキリングを効果的に実施するためには、適切な手順が必要です。ここでは、計画から効果測定までの5つのステップを詳しく解説します。
4-1.必要なスキルの洗い出し
将来的に必要なスキルと現状のギャップを見直し、優先的に取り組むべき分野を特定します。優先的に取り組むべき分野を特定することで、効率的なリスキリングが可能になります。
4-2.リスキリング計画の作成
明確な学習目標を設定し、段階に応じた適切な学習プランを作成しましょう。オンライン学習、ワークショップ、OJTなど、多様な学習方法を組み合わせることが効果的です。
4-3.従業員の参加促進
リスキリングの重要性を従業員に周知し、キャリアパスの明示や報酬体系の見直しを行うことで、従業員の参加を促進します。自己成長と組織貢献の両面からリスキリングの意義を伝えることが重要です。
4-4.学習環境の整備
従業員が効果的に学習できるよう、必要なツールやプラットフォームを提供します。社内リソースだけでなく、外部の専門家による研修も活用し、最新の知識やスキルを取り入れると良いでしょう。また、座学だけでなく、実際の業務に新しいスキルを生かす機会を設けることで、学習内容を定着させると同時に、実務への応用力を高めることができます。
4-5.進捗管理と効果測定
KPIを設定し、定期的な評価とフィードバックを行うことで、プログラムを継続的に改善します。学習成果を可視化したり、習得したスキルの業務への活用度合いを図ったりすることが効果的です。
5.国内企業のリスキリング成功事例
ここでは、リスキリングを成功させている国内企業の事例を紹介します。
5-1.日立製作所
日立製作所は、2019年に設立した社内大学「日立アカデミー」で多様な研修を実施しています。具体的には、リスキル・アップスキルのニーズに合わせたDX研修やIT研修を常時約1,300講座展開しています。この研修と職場OJTでの実務経験を効果的に組み合わせることで、デジタル人材の育成を進めました。
また、学習体験プラットフォームを活用した自律的なリスキリングにも力を入れています。AIが従業員一人ひとりの仕事内容やキャリアプラン、学習履歴を分析し、最適な学習コンテンツを提供する仕組みを取り入れました。これにより、従業員同士がお互いの学びを共有し、効果的・効率的に学習を進めることにつながったといいます。
5-2.石川樹脂工業
石川樹脂工業は、経営者自らがリーダーシップを取り、積極的にリスキリングに取り組んでいます。具体的には、人材不足解消のためのロボット導入とそれに伴うプログラミング技術の習得、デジタルマーケティング分野での若手社員の育成などを実施しました。その結果、業務の自動化やオンライン売上の大幅増加など、あらゆる成果を上げています。
さらに、脱炭素化に向けたグリーン分野のリスキリングにも着手し、LCA(ライフサイクルアセスメント)の学習を通じて、環境に配慮した製品開発にも力を入れています。これらの取り組みにより、従業員の給与引き上げも実現し、企業の競争力強化と持続可能な成長につなげています。
5-3.IBUKI
IBUKIは、中小企業のデジタル化において内製化を重視し、成功を収めています。従業員の1割をデジタル化推進チームに配置し、基幹システムをほぼ完全に内製化しました。特筆すべき点は、プログラミングスキルを持つ元従業員を呼び戻し、外部のIT人材の協力を得て育成したことです。これにより、数億円相当の基幹システムを自社で開発しました。
また、外部人材のスキルを社内に「巻き取る」戦略を採用し、平均的な社員にスキルを習得させることで、組織全体のデジタルリテラシー向上を図っています。加えて、タブレットPCやAI画像識別装置などの先端技術を日常的に目にする環境を整備し、従業員が自然とデジタル技術に慣れ親しむ工夫を行っています。
これらの取り組みの結果、従業員が自発的にIoTデバイスを開発するなど、組織全体のデジタル化と創造性の向上に成功しました。
6.DX推進に効果的なリスキリングのポイント
DX推進につながるリスキリングを成功させるには、いくつかのポイントがあります。ここでは、3つの重要な観点から解説します。
6-1.経営層の理解と全社的な推進
リスキリングの成功には、経営層のコミットメントと全社的な協力体制が不可欠です。DX戦略と連動したリスキリング計画を策定し、部門を超えた協力体制を構築することで、効果的に推進できます。
6-2.従業員の主体性・モチベーションの維持
従業員が自らの成長とキャリア発展のためにリスキリングに取り組む環境を整えることが重要です。明確なキャリアパスの提示や、多様な学習機会の提供、適切な評価・報酬制度の導入などにより、社員の主体性とモチベーションを高めることができます。
6-3.外部リソースの活用
すべてのリスキリングプログラムを社内で開発・実施するのではなく、外部のDXコンサルタントやオンライン学習プラットフォームを効果的に活用することも重要です。業界のトレンドや最新のテクノロジーに関する知見を得られるだけでなく、コスト効率も高めることができます。
DXコンサルについては、以下の記事で詳しく解説しています。
DXコンサルとは?役割や仕事内容、依頼するメリット・デメリットを解説
まとめ:DX時代に不可欠なリスキリングで企業と個人の成長を加速
リスキリングは、DX時代における企業と個人の成長に不可欠な取り組みであり、DX人材の確保や従業員エンゲージメントの向上といった、多くのメリットをもたらします。適切なリスキリング戦略を採用し、継続的に実施することで、企業は急速に変化するデジタル環境に適応し、競争力を維持・強化できるでしょう。本記事で紹介したリスキリングの実施手順やポイントを参考に、自社に合ったリスキリング戦略を立案・実施し、DX時代の成功を掴みましょう。
サン・エム・システム株式会社では、DX推進に効果的なリスキリングを支援する、さまざまなサービスを提供しています。特に、DX人材育成サービスでは、IT技術動向やDXリテラシーなど、従業員一人ひとりのスキルアップに役立つ研修プログラムをご用意しています。また、IT助言・提言や業務の現状把握、DX戦略策定などのサービスを通じて、お客様の企業に最適なDX推進をサポートいたします。DX時代のリスキリングや人材育成にお悩みの方は、ぜひ弊社までお気軽にお問い合わせください。
【この記事を書いた人】
サン・エム・システムコラム編集部でございます。