⌚ 2023/12/14 (Thu) 🔄 2024/3/20 (Wed)
金融DXとは?課題解決に向けた取り組み事例や注意点を解説
金融業界におけるデジタル技術によるビジネス変革は金融DXと呼ばれています。金融DXは業界の特性もありは、時代の流れに対応できず、変革が遅れているケースも多く見られます。今回は、金融業界が抱える課題や現状、金融DXの取り組み事例や注意点を解説します。
- 金融業界について知りたい方
- 金融業界のDXの取り組みについて知りたい方
- 金融DXの進め方を悩んでいる方
1.金融業界におけるDXとは
そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)の定義とは、デジタル技術を活用し、事業のあり方やビジネスモデルを変革し、競争力や成長力を高めるための取り組み全般を指します。デジタル技術の導入そのものや一つの業務でのことではなく、組織全体を変えることがDXの根本的な意義です。
金融業界においては、金融業務のプロセスを効率化・高度化し、新たなサービスや商品を提供し、顧客体験を向上させ、さらには金融自体のビジネスモデルを変革することを目指す取り組みと言えるでしょう。
2.金融業界の現状と課題
金融業界では、DX推進にあたりさまざまな課題を抱えています。ここでは、金融業界の現状と課題を説明します。
2-1.レガシーシステムの存在
多くの金融機関は、長年にわたって独自のシステムを採用し、カスタマイズを繰り返してきました。これらのシステムは複雑化する一方、技術的には時代遅れとなり、「レガシーシステム」と呼ばれています。
レガシーシステムは拡張性に欠け新しいテクノロジーとの統合が難しいことから、新たなシステム導入や刷新の障害となっています。
2-2.古い慣習による障壁
金融業界では、伝統的な慣習やプロセスに固執する傾向が多く見られるため、新しいアイデアやアプローチの採用が妨げられることが少なくないでしょう。
古い慣習はイノベーションへの動きを抑制し、業務効率や時代への適応力の低下につながるおそれがあります。
2-3.取引データの活用ができていない
金融業界は日々膨大な取引データを扱い、蓄積していますが、これらのデータを十分に活用できていない場合があります。顧客データが活用できないと、顧客ニーズの発掘や適切な提案が行えず、機会損失につながるでしょう。
2-4.他業態からの参入によるニーズの高度化
IT企業をはじめとする他業態から金融業界に参入し、新たなツールやサービスを提供しています。こうした環境変化に伴い、顧客ニーズはますます高度化していることから、従来型のサービスだけでは、競争力優位を維持することは簡単ではありません。
2-5.高度なサイバーセキュリティ
金融業界は常にサイバーセキュリティの脅威にさらされています。顧客の取引データや資産内容、個人情報など機密情報を扱うことから、データ漏えいやサイバー攻撃からの保護が非常に重要です。
サイバー攻撃は常に変化し高度化するため、これに備えるためには最新技術の導入や強固な体制構築が求められています。
3.金融DXで実現できること
金融DXにより、どのようなことが実現可能なのか解説します。
3-1.人工知能(AI)やRPA導入による定型業務の効率化
AIやRPAといったデジタル技術を活用し、口座開設や入出金処理、振込処理、各種届出変更といった定型業務を自動化することで、ヒューマンエラーの削減と事務の省力化が実現します。
また、チャットボットによるお問い合わせ対応は、24時間365日の受付が可能です。顧客満足度の向上だけでなく、オペレーターの負荷軽減にもつながります。
3-2.セキュリティ技術の導入による安全性の向上
生体認証の活用による本人確認は、既に多くのサービスで導入されています。ATMやインターネットバンキングのアプリにおける取引では、指紋認証や顔認証の技術が活用され、安全性だけでなく、利便性の向上にも役立っています。
銀行口座開設やクレジットカード申し込みでは、その場で撮影した顔写真と本人確認書類の写真の一致を判別する技術が活用され、不正申し込みを排除に役立っています。金融機関にとっては、本人確認にかかる事務負担を大幅に削減できるメリットも同時にあります。顧客はオンラインで手続きを完了でき、本人確認書類を郵送する手間が省くことができます。
3-3.クラウド化によるシステム運用費の削減
クラウドベースのサービスを使用して、柔軟性と拡張性を向上させ、ITサービスおよびIT環境の運用や管理のコストを削減可能です。将来的なデータ増加や機能追加にも対応しやすくなり、新しいシステムを導入しやすくなります。
3-4.ビッグデータ分析による金融サービスの高度化
保有している膨大な取引データを市場データといった外部データと合わせてAIで分析することで、高度にカスタマイズ化した投資アドバイス、融資提案などが行えるようになります。顧客に合った提案を適切に行えることから、取引機会を増やし、収益向上につながるでしょう。
4.金融業界におけるDXの取り組み事例
金融業界におけるDXの取り組み事例を紹介します。
4-1.SMBCグループ
同グループでは、顧客の利便性向上を目的とし、テクノロジーを活用して新しいサービスの創造と既存サービスの進化に取り組んでいます。
デジタル化戦略は「守り」と「攻め」に分かれており、守りではインフラ基盤の改善と事務プロセスのIT化によるコスト削減を推進しています。
また、非金融業の競合も意識し、銀行業界の進化への検討を進めてきました。銀行の三大機能だけでなく、顧客の本質的なニーズに焦点を当て、DX支援を行う「攻めのデジタル化」を開始しました。
4-2.ふくおかフィナンシャルグループ
ふくおかフィナンシャルグループは、地方銀行独自のDX取り組み事例として注目を集めています。
同グループでは2019年4月からDXを基本方針のひとつとし、電子化された金融商品取引や完全非対面の「みんなの銀行」などを実施しています。
自社内の業務プロセスを再構築して、デジタル技術を活用し、ペーパーレス化や印鑑レス化、バックレス化などを導入した結果、約2割の効率化を達成しました。
5.金融DXに取り組む際の注意点
金融DXに取り組む際に留意したい点を解説します。
5-1.セキュリティとプライバシーの確保
金融DXを進めるにあたっては、取り扱うデータの特性上、データセキュリティとプライバシー保護に最大の注意を払わなければなりません。レガシーシステムからは速やかにデータ移行を実施する必要はありますが、セキュリティの脆弱性へのリスクを最小限に抑えて、安全に進めていくことが重要です。
5-2.デジタル格差への対応
デジタルデバイスやデジタルサービスの普及にも関わらず、これらの利用が難しい顧客も依然として存在します。デジタル格差は顧客間でサービスの不平等を生み出します。金融機関はデジタル化の普及を促進しつつも、すべての顧客に包括的なサービスを提供することが必要です。
5-3.文化の変革
古い慣習が残る金融業界においては、従業員にDX文化を浸透させ、新しいテクノロジーとプロセスに適応させることは大きな課題です。DXへ理解を深める研修の実施やDX推進を担う人材育成を通じて、DX推進の円滑に進めるための素地を作っていくことが重要です。
DX研修やDX人材について詳しく知りたい方はこちらの記事をご参考にしてください。
DX研修とは?未来に向けた企業成長の軸となる人材を育成するために
DX人材とは?求められる役割や必要とされる理由、人材確保の方法
5-4.規制とコンプライアンスの遵守
規制環境は絶えず変化しており、新しい法規制や要件を遵守することは避けて通れない課題です。
金融業務がグローバル化する中で、異なる国や地域の規制に適合する必要性も増しています。関連する法規制についての情報を常に把握し、迅速に対応することが不可欠です。
この記事のまとめ
金融DXでは、膨大な個人情報と金融資産を守りながら慎重に業務変革を進めていく必要があります。金融業界特有の課題が多数ありますが、DXによって得られる業務効率化やセキュリティ向上などのメリットは少なくありません。ひとつずつ課題をクリアしながら、DX推進の着実な歩みを進めていかなければなりません。
古い慣習が残る金融業界でDX推進を効果的に行うためには、DXのメリットを十分に理解し実践できる人材が必要です。自社での人材育成が難しい場合は、外部の専門家からアドバイスを得ることも有効な選択肢となるでしょう。
サン・エム・システムでは、DXの確実な推進に役立つサービスを提供しています。DXアドバイザー担当者がDX化に関する助言・提言を行い、各企業に合わせたDX推進をサポートします。金融DXの推進にお悩みの際には、ぜひご相談ください。
【この記事を書いた人】
サン・エム・システムコラム編集部でございます。