⌚ 2023/10/13 (Fri) 🔄 2024/3/20 (Wed)
小売業のDXとは?解決すべき業界の課題と事例を紹介
さまざまな業界でDXへの取り組みが注目されていますが、小売業においても例外ではありません。
小売業を取り巻く環境は急激に変化しており、様々な課題を生んでいますが、その課題への対応にはDXが不可欠と考えられています。
本記事では、小売業が直面する課題やDXを通じて実現できることについて解説するとともに、取り組み事例について紹介します。
- 小売業の経営者や小売企業の担当者
- デジタルマーケティング専門家
- DXコンサルタント
1.小売業におけるDXとは
DXとは、従来のビジネスモデルを変革し、デジタル技術を活用して顧客体験を向上させ、効率的な運営を実現することを指します。
小売業においては、商品の仕入れや販売、請求など業務プロセスのあらゆる場面でデジタル技術を活用した効率化をすすめ、小売業自体のビジネスモデルを変革することを意味します。
例えば、オンライン・オフラインをシームレスに行き来できる購買環境の提供、データに基づく在庫管理や販売の効率化などが挙げられます。
2.小売業が直面している課題
小売業は、めまぐるしい環境の変化に伴いさまざまな課題に直面しています。
・消費者の購買プロセスやニーズの多様化
近年のスマートフォンをはじめとするモバイル端末の普及により、消費者はホームページやSNSを通じて容易に情報収集できるようなりました。そのため、商品やサービス、購入方法の選択肢が増え、購買プロセスや顧客ニーズはますます多様化しています。
・膨大な顧客データの活用不足
小売業では、顧客の購買履歴や行動履歴などの膨大なデータが日々蓄積されています。しかし、これらのデータを有効に活用されているとはいえないでしょう。顧客一人ひとりのニーズにあったきめ細かな対応や販促活動、経営判断に活用するためには、データを蓄積するだけでなく、整理し分析する必要があります。
・サイバー攻撃による情報漏えいリスクの増加
小売業は、顧客の個人情報や支払い情報を大量に扱うため、サイバー攻撃の標的にされやすい業界だといわれています。顧客の情報が流出した場合には、顧客の経済的な損害や個人情報の悪用、企業の信用失墜につながる可能性があり、サイバーセキュリティ対策はますます重要性を増してます。
3.小売業がDXで実現できること
小売業がDXによって実現できることには次のようなことがあります。
・OMO( Online Merges with Offline )
OMOとは、顧客が「オンライン」と「オフライン」での体験や活動をシームレスに結びつけることを指します。例えばWebで情報を得て店舗で試着や購入、または店舗で商品を見てからオンラインで購入するなどです。デジタルとリアルが一体となることで、顧客の購買行動に選択肢を増やします。
・在庫管理の最適化
AIを活用することで、過去のデータや天候、イベントなどのさまざまなデータを分析し、精度の高い需要予測が可能になります。これにより、これまで人の勘や経験に頼っていた需要予測を改善し、在庫不足や過剰を防ぐことができ、適正な在庫管理が可能になります。
・店舗運営の効率化
スマートフォンを使ったデジタル決済は、既に多くの店舗で利用されており、目にする機会も増えたことでしょう。大型チェーンを中心に、無人レジの導入も進んでいます。決済業務の効率化は、顧客の待ち時間の短縮や接客サービスの充実に役立っています。
・データ駆動のマーケティングと販売戦略
自社の顧客データの活用により、効果的な販売戦略を立てることが可能です。たとえば、顧客の購買・行動データ、属性を分析することで、ターゲティングの精度をあげ、顧客のニーズに寄り添った効果的な販促施策を行うことができます。販促の効果は可視化され、施策の見直し、改善に役立てることもできます。自社のデータを外部データと組み合わせれば、精度の高い商圏分析も可能です。出店戦略の効率化につながります。
・オンラインストアの展開
オンラインストアの展開により、顧客は多様なジャンルの商品をオンラインで購入できます。場所や時間にとらわれず利用でき、顧客の利便性は大幅に向上しています。配送業務とのスムーズなデータ連携により、注文したその日に配送するサービスまで登場してます。企業にとっては、直接来店できない顧客層へのアプローチにつながるメリットがあります。メールアドレスの獲得により顧客接点が強化され、リコメンドやメール配信などの販促活動につなげることができます。
4.小売業におけるDXの取り組み事例
4-1.株式会社ヤクルト
株式会社ヤクルトの本社直販営業部では、カメラを活用したGo Insight(ゴウリカマーケティング株式会社)を使って、乳酸菌飲料コーナーでの買い物客動向を分析し、販促施策の効果測定を行ってます。実際に、棚の最下段に商品を設置すると購入率が高まった、販促資材の設置により50~60代の男性の購買が増えたといった施策の効果がわかり、飲料を販売する小売店への提案につなげてます。
参考:Go Insight 導入事例 |株式会社ヤクルト本社 様|ゴウリカマーケティング株式会社 (旧コニカミノルタマーケティングサービス株式会社)
4-2.株式会社平和堂
滋賀県でスーパーマーケットを展開する株式会社平和堂では、AIに関連情報を与えることで、販売予測を行い自動発注する仕組みを導入しました。業務効率化・生産性向上・お客様とのコミュニケーション増加・在庫日数の削減・廃棄ロスの削減・売場実現度向上など、これまで小売業者が抱えてきた課題の解決が期待できます。
4-3.ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社
首都圏を中心にスーパーマーケットを展開するユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社は、レジに並ぶことなくスマートフォンだけで買い物ができるアプリ「Scan&Go Ignica(イグニカ)」を開発しました。
顧客はアプリを使って買いたい商品のバーコードを自らスキャンし、そのままアプリ上で決済まで行うことができます。従業員のレジ業務の省力化につながり、人手不足の解消にも役立っています。
参考:脱スーパーマーケット。スマートフォンを新たなインフラに、これまでになかった業態を作り出すユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H)の挑戦 : 富士通
4-4.株式会社ノジマ
大手家電量販店の株式会社ノジマでは、パナソニックの「電子棚札システム」を全184店舗に導入しています。POSデータと価格表示を連携させることで、店頭の棚札の価格表示を正確かつスピーディーに更新でき、作業ミスの削減につながっています。消費税率の改定に伴う切替対応時には、システムで一括更新を行い、店舗における切替作業時間をほぼゼロにできました。
参考:国内初 ノジマがパナソニックの「電子棚札システム」を全184店舗に導入完了消費税率10%の増税価格への切替もスムーズに | お知らせ | ニュース | 株式会社ノジマ
4-5.株式会社ユニクロ
ユニクロでは、オンラインショップで購入した商品を、指定先の店舗で受け取れるサービス「ORDER & PICK」を提供しています。オンラインで商品の在庫状況を確認し、購入から決済まで済ませているため、レジに並ばずに商品を受け取ることできます。
5.小売業でのDX推進の注意点
小売業でDXを推進する際、どのような注意点があるのか解説します。
小売業の業務は、仕入れ、在庫・販売管理、接客など多岐にわたります。業務ごと、拠点・エリアごとなどで異なるルールが適用され、それぞれに最適化されていることが多いでしょう。各分野からの理解を得られないと、大きな変化を伴うDXを進めることは難しいでしょう。
また、小売業は伝統的であり中小企業が多い業界です。既存のビジネスモデルや業務プロセスを抜本的に見直すような変化を受け入れにくいという点にも注意が必要です。中小企業が多いため、DX推進に必要な人材が不足していることも課題です。
こうした注意点を踏まえDXを推進するためには、経営者のリーダーシップのもと、DXの目的や戦略を明確化し、全社に共有することが重要です。また新しい取り組みを実践できるよう従業員一人ひとりのスキルを高める必要もあります。ときには、DXの知見を持った専門家のサポートを得るということも、DX推進をスムーズに進めるための選択肢として検討するといいでしょう。
DX推進の課題を解決する方法について、詳しくは次の記事で解説しています。
DX推進の課題とは?その解決の方法を解説
6.小売業における環境変化への対応にはDX推進が不可欠
消費者の購買行動の変化により、小売業界を取り巻く環境が急激に変化しています。こうした変化に対応し、競争力を維持するためは、小売業においてもDX推進は不可欠です。
一方、小売業は伝統的な業界であるため、DX推進を効果的に行うためには、DXのメリットを十分に理解し実践できる人材が必要です。自社での人材育成が難しい場合は、外部の専門家からアドバイスを得ることも有効な選択肢となるでしょう。
DXにお悩みの小売業の経営者様やご担当者様は、一度伴走型DXアドバイザーサービスをご提供するサン・エム・システムへご相談ください。