⌚ 2023/9/13 (Wed) 🔄 2024/3/20 (Wed)
物流DXとは?物流業界の課題と解決につながる活用例も解説
物流業界はDX推進を強く求められている業界のひとつです。トラックドライバーの時間外労働の規制強化に関わる「2024年問題」への対応が求められており、DXが有効な対策として期待されています。
本記事では、物流業界においてDX推進が求められている理由や業界の課題、DXの活用例について解説します。
- 物流DXについて知りたい方
- 物流業界においてDX推進が求められている理由や業界の課題について知りたい方
- 物流DXの活用例について知りたい方
1.物流DXとは
DXはDigital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の頭文字を取った略称で、日本語では「デジタル変革」と訳されます。経済産業省では、「データとデジタル技術を活用してビジネスモデルを変革するとともに、競争上の優位性を確立すること」と定義づけています。
物流DXとは、物流業界におけるDXのことです。輸送・保管・荷役といった物流事業の各過程においてデジタル化や機械化を図り、業務を効率化することです。さらに一歩進んで新たなサービスやビジネスモデルなどを創出し、物流自体に変革することを意味しています。
2.物流業界が抱える課題
物流業界が抱える課題について整理します。
2-1.EC市場の拡大に伴う小口配送の増加
通信販売の普及により、EC市場が拡大したため、個人宅への小口配送が急増しました。小口配送は、大口配送に比べて配送回数が多く、再配達の割合も高くなるため、人件費や燃料費などのコストが増加します。同時に、トラック積載率の低下や倉庫内での在庫管理の複雑化なども招いています。
2-2.深刻な人手不足
小口配送の増加は、深刻な人手不足を招いています。かねてよりドライバーの高齢化が問題視されてきましたが、国土交通省の総合政策局物流政策課の調査資料「最近の物流政策について」によると、道路貨物運送業の従事者の年齢構成に関して"全産業平均より若年層の割合が低く、高齢層の割合が高い"という結果が出ています。
全産業での人手不足が進むなかで、物流業では特に新たな働き手が増えていない状況がわかります。
参考:最近の物流政策について
2-3.長時間労働の常態化
小口配送の急増と人手不足は、長時間労働を常態化させ労働環境の悪化を招いています。前述の調査資料「最近の物流政策について」によると、トラック運送業に携わる人の労働時間に関しては"全職業平均より約2割長い"という結果でした。
2-4.2024年問題への対応
物流業界の「2024年問題」は、深刻なトラックドライバー不足をもたらすと懸念されています。
「2024年問題」とは、働き方改革関連法における自動車運転業務を対象とした時間外労働の上限規制が2024年4月から適用されることによって起こる諸問題のことです。物流業界のトラックドライバーの働き方に影響するため、労働力が不足し、輸送能力が低下する恐れがあると考えられています。
2-5.燃料や資材などのコスト高騰や環境への配慮
燃料費や資材などの高騰は、運送コストに大きな影響を及ぼします。さらに小口配送や再配達の増加はコスト高騰に拍車をかけています。
また、物流業界は、多くの輸送車両や梱包材、帳票類を扱うことから、環境に配慮することも強く求められています。大手運送会社を中心に低公害車の導入が進められていますが、業界全体に浸透するにはまだまだ時間がかかるでしょう。
3.物流DXで解決できること
このような課題に対して、DXによってどのようなことが改善・解決できるのかを説明します。
3-1.配送状況の可視化
荷物の現在地や荷配送状況がリアルタイムの把握できるようになります。
荷物追跡システムの利用で、荷物の受取人は到着予定日や配送状況の確認をよりスムーズに行うことができます。再配達や問い合わせの削減、配送効率の向上につながります。
3-2.配送ルートの最適化
現在地や配送状況、車両条件、交通情報などの情報をもとに、自動的に最適な配送ルートを設定することが可能になります。これは、燃料コストの節約や環境負荷の軽減につながります。
従来ベテラン従業員の経験値に基づくアナログ的手法に頼っていた業務を、AIの活用のよる高度なデータ分析やシミュレーションに置き換えることで実現されます。
3-3.在庫管理や配送作業の効率化
IoT(モノのインターネット)を用いたタグで商品の位置や在庫量のリアルタイムな把握が可能となり、大幅な効率化を図ることができます。
さらに、倉庫内を自在に移動し、仕分けやピッキングを自動的に行うロボットは、人為的なミスを減らし、作業員の負担を減らすことに役立ちます。特に人手の確保が難しい繁忙期や年末年始などに、少ない人手で対応できるようになります。
AIやIoT以外にもDX推進において活用されるデジタル技術があります。
デジタル技術について詳しく知りたい方はこちらの記事をご参考にしてください。
「DXにおける技術の種類とは?課題解決に役立つ情報を解説」
3-4.積載率の向上
トラックの積載率向上は、配送の効率化につながる重要な取り組みです。配送や荷物の状況を正確に把握できれば、複数の配送先への配送などが積載率を高めた効率的な配車やルートが可能です。
また、異なる荷主企業同士をつなぎ、積載率の低い帰り便をほかの荷主のニーズとマッチングさせることにより、共同配送が可能になります。人手不足の解消やコスト削減に効果的なだけでなく、新たな荷主の開拓につながる可能性もあります。
3-5.職場環境の改善
物流DXで従業員の労働時間や勤務状況を正確に把握することは、過度な長時間労働を予防し、健康的に働いてもらえる環境づくりに役立ちます。業務の効率化がすすめば、残業が減りプライベートの時間を確保しやすくなるため、従業員の満足度は上がることでしょう。
4.物流DXの活用例
物流DXのいくつかの活用例を挙げながら、取り組み内容や効果をそれぞれに説明します。
4-1.バース予約システムで待ち時間短縮
物流センターや倉庫のデジタル化の事例のひとつとして挙げられるのが、バース予約・受付システムです。荷物の積卸しのためにトラックを停車する場所をバースといいます。到着したトラックは、空きバースがない場合にバースが空くまで待機する必要があり、待機時間や近隣住民からの苦情などが大きな問題になっています。
バース予約・受付システムをドライバーの携帯電話と連動させ、バースの順番が近づいたら連絡する仕組みにすることで、ドライバーの待機時間の低減と物流効率の向上につながります。
4-2.自動搬送装置で入出庫業務を省力化
物流センターや倉庫の自動化・機械化の活用例として代表的なのが、自動搬送装置(AGV,Automated Guided Vehicle)や自動フォークリフト(AGF,Automated Guided Forklift)です。物流倉庫内では入出庫搬送が中心的な業務ですが、従来、人が行っていたハンドリフトけん引や、フォークリフト操作を自動化し無人で行うことができます。
4-3.AI点呼ロボットで運行管理者の負担を軽減
働き方改革と安全性の観点から、ドライバーの労働時間や勤務状況の把握は重要ですが、運行管理者にとっては大きな業務負荷になっています。
顔認証技術等のAIを搭載した自動点呼ロボットの導入により、本人確認やアルコールチェック、体調管理などをロボットが代行することで、運行管理者の負担を減らすことができます。また、労働時間も自動的に把握できることから、適切な労務管理が可能です。
4-4.自動配車システムで配送計画を高速化
従来の配車計画は、経験や土地勘を持った担当者が、さまざまな制約を考慮して時間をかけて行っていました。担当者の負担が大きいうえに、業務が属人化していて引き継ぎは難しいと考えられていますが、自動配車システムを活用することで、複雑な条件に対応した最適な配車計画でも短時間に作成することができるようになります。
急な変更があっても、計画を柔軟に変更することも可能です。また、業務を標準化でき、経験の有無にかかわらず最適な配車計画を立てられます。
4-5.過疎地域へのドローン配送
ドローン配送はすでに過疎地域での商用サービスが開始されています。採算がとりにくい地域への配送を効率化するメリットがありつつ、地域住民の生活の質の向上にも貢献するサービスです。将来的には、災害時の孤立集落への輸送や、中山間部・沿岸部の高齢者宅への買い物サービスなど、活用される場面が増えることが期待されています。
参考:物流・配送会社のための物流DX導入事例集~中小物流事業者の自動化・機械化やデジタル化の推進に向けて~ | 国土交通省
このように物流業界でもDXによる取り組みは増えていますが、ほかの業界に比べると遅れているのが現状です。その理由として、物流の各過程において、荷主や配送業者、倉庫業者などさまざまな企業が複雑に関係し合っていることが挙げられます。物流DXを更に推進するためには、物流業界全体が企業の枠を超え課題を共有し、共同で課題解決に取り組む姿勢が求められるでしょう。
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5.物流業界の課題解決にはDX推進が不可欠
物流業界は人手不足や小口配送の急増など多くの課題を抱えていますが、これらの課題を解決するにはDX推進が有効です。DXを積極的に行うことにより、配送ルートの最適化や積載率の向上など多くのメリットが得られるでしょう。
一方で、どのようなことから手を付けていいのかわからないと悩む経営者も少なくありません。自社に最適なDXへの取り組みを行うためには、外部の知見を上手に活用することが効果的です。
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【この記事を書いた人】
サン・エム・システムコラム編集部でございます。